遺産に借金があるかも?相続の注意点と今すぐできる確認方法
2025.8.30
相続で「借金」も引き継がれるって本当?
相続というと、財産を受け取るイメージが強いですが、実は借金などの「負の財産」も相続の対象になります。
亡くなった方(被相続人)に借金があった場合、その借金も相続人が引き継ぐことになる可能性があります。
これは民法のルールで定められており、財産の中に現金や不動産がある場合と同じように、ローンや未払い金も「相続財産」に含まれると考えられています。
たとえば、クレジットカードの未払金、消費者金融からの借入、住宅ローン、税金の滞納などが該当します。
相続人が何も手続きをしないでいると、すべての財産と借金を無条件で引き継いだと見なされる場合もあります。
そのため、相続が発生したら「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」もあるかどうかを、早めに確認することがとても重要です。
まず何をすべきか?相続発生直後の確認ポイント
相続が発生したとき、何よりも大切なのは冷静に状況を把握することです。
感情的に動いてしまうと、後で大きなトラブルにつながることがあります。
特に借金がある可能性がある場合は、慎重な対応が求められます。
まず、相続人が誰かを確認しましょう。
法律では、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが相続人になる可能性があります。
相続人全員が、相続の手続きや選択をする必要があるためです。
次に、被相続人が残した財産や借金を調べる準備を始めます。
この時点で、すぐに財産を使ったり、遺品を処分したりするのは避けたほうがよいとされています。
なぜなら、そうした行為が「すべての財産を受け入れた」と判断され、相続放棄ができなくなることがあるからです。
また、借金があるかもしれないと感じたら、「相続放棄」や「限定承認」といった手段を選ぶための判断材料を集める必要があります。
これらの手続きには期限があるため、早めに動くことが大切です。
借金があるかを調べる方法【4つのパターン】
被相続人に借金があったかどうかは、見た目ではわかりません。
知らずに相続してしまうと、後で借金の返済義務が発生することもあるため、確認作業がとても重要です。
ここでは、相続人が自分でできる「借金の調べ方」を4つのパターンに分けてご紹介します。
それぞれの方法には手間や時間がかかることもありますが、できるだけ早めに行動することが安心につながります。
次の見出しから、各方法の内容を詳しく見ていきましょう。
1.自宅内の書類や通帳、請求書を確認する
まず最初に行いたいのが、自宅の中に残された書類をくまなく確認することです。
借金に関する手がかりは、意外と身近な場所にあることが多いためです。
たとえば、次のようなものを探してみましょう。
- 銀行の通帳やキャッシュカード
- 消費者金融やカード会社からの請求書
- クレジットカードの明細や契約書
- ローン契約書や返済計画表
- 督促状や封筒に「重要」と書かれた郵便物
こうした書類から、どの会社と取引があったか、残債がどれくらいあるのかなどを確認できます。
通帳の履歴に「〇〇ローン」「△△カード」などの引き落としがあれば、借入がある可能性も考えられます。
また、定期的に届いている郵便物が保管されている場所もチェックポイントです。
自宅に書類が残されていない場合でも、次の見出しで紹介する方法でさらに確認することができます。
2.郵便受け・電話・メールの確認
自宅の書類に手がかりがない場合でも、郵便物や電話、メールなどから借金の存在がわかることがあります。
特に最近は、書面だけでなくデジタルでのやり取りも増えているため、注意深く確認することが大切です。
まずは、郵便受けに届いている封筒を確認しましょう。
以下のようなものがあれば、借入先との関係がある可能性があります。
- 消費者金融やカード会社からの請求書やお知らせ
- 督促状や返済の催促が記載された郵便物
- 「重要」「至急」などと書かれた封書
次に、自宅の固定電話や携帯電話に残された着信履歴や留守番電話の内容を確認します。
金融機関や債権回収会社からの連絡が入っていることもあります。
さらに、スマートフォンやパソコンのメールアカウントを確認できる場合は、カード会社や金融機関からの通知が届いていないかもチェックしてみましょう。
これらの情報から、借金の有無だけでなく、どの金融機関と取引があったのか、返済状況はどうだったかといった具体的な情報を得られることがあります。
3.信用情報機関(CIC・JICCなど)への開示請求
書類や郵便物からはっきりしない場合でも、信用情報機関に問い合わせることで、借金の有無を調べられる可能性があります。
信用情報機関とは、消費者金融やクレジットカード会社などから「お金の借り入れ・返済状況」に関する情報を集めて管理している専門機関です。
主に以下の3つがあります。
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- JICC(株式会社日本信用情報機構)
- KSC(全国銀行個人信用情報センター)
被相続人の情報をもとに、これらの機関へ「信用情報の開示請求」を行うと、どの会社から借入があったか、いくら借りていたかといった内容を確認できます。
ただし、本人がすでに亡くなっている場合、相続人が代理で開示を請求するには戸籍や死亡診断書などの書類が必要になります。
手続きは郵送で行うのが一般的で、数百円の手数料がかかります。
信用情報の開示は、見落としを防ぐうえでも非常に有効です。
「自宅に手がかりがない」「心配な点がある」という場合には、積極的に活用を検討してみるとよいでしょう。
4.取引履歴が不明な場合は弁護士に相談する選択肢も
被相続人の借金について、書類や信用情報を調べても詳しい取引内容がわからない場合や、どのように対応すればよいか判断に迷う場合には、弁護士に相談するという選択肢もあります。
弁護士は、金融機関や債権回収会社とのやり取りに慣れており、相続人の代理として借金の内容を調査したり、必要に応じて相続放棄や限定承認の手続きをサポートしたりしてくれます。
また、法的なリスクや手続きの期限についてもアドバイスを受けられるため、「借金の有無が不安」「取引先が複数あり把握しきれない」といったケースでも、安心して対応を進めることができます。
特に、借金の返済がすでに滞っていた可能性がある場合や、見知らぬ債権者から督促が届いた場合などは、早めに弁護士に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
借金も相続対象?相続財産に含まれる債務の種類とは
相続では、現金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金などの「マイナスの財産」も相続の対象になります。
これらのマイナスの財産は「債務(さいむ)」と呼ばれ、法律上も相続人が引き継ぐことになると考えられています。
借金と一口に言っても、その内容はさまざまです。
どのような債務が相続の対象になるのかを知っておくことは、相続放棄や限定承認を検討する上でも非常に重要です。
この見出しでは、代表的な債務の種類について詳しく見ていきます。
中には見落としやすいものもあるため、一つひとつ確認しておくとよいでしょう。
消費者金融・クレジットカード・住宅ローンなど
相続財産に含まれる債務の中で、最も多く見られるのが「消費者金融」や「クレジットカード」、「住宅ローン」などの借金です。
これらは契約に基づいて発生するもので、被相続人が亡くなっても、基本的には相続人がその返済義務を引き継ぐとされています。
たとえば以下のようなケースが該当します。
- 消費者金融からの借入(プロミス、アコムなど)
- クレジットカードのショッピングやキャッシングの未払い分
- 自動車ローンや教育ローンの残債
- 銀行などからの住宅ローンの未返済額
これらの債務がある場合、契約書や明細書、通帳の引き落とし履歴などから内容を確認することができます。
ただし、住宅ローンについては団体信用生命保険(団信)に加入していた場合、死亡によって残債が免除されることもあります。
契約内容によっては、死亡時点で支払い義務が終了するものもあるため、金融機関や保険会社への確認が必要です。
一見すると大きな借金に見えても、実際には支払いが不要な場合もあるため、慎重に調査を行うことが重要です。
滞納税金・公共料金・医療費の未払い
借金以外にも、被相続人が亡くなるまでに支払っていなかった「滞納分」も相続の対象になることがあります。
具体的には、次のようなものが該当します。
- 所得税や住民税、固定資産税などの滞納
- 電気・ガス・水道といった公共料金の未払い分
- 病院での治療費や入院費の支払い残し
これらは「借金」とは少し性質が異なりますが、相続財産に含まれる債務として、相続人が支払う責任を負うことがあるとされています。
特に、税金の滞納は自治体や税務署からの請求が届くこともあるため、放置せず対応することが大切です。
また、病院や施設に入院・入所していた場合には、最終月の請求書が後日届くこともあります。
これらは郵便物や連絡先を通じて、しっかり確認しておく必要があります。
滞納金や未払い分があるかどうかは、自宅に届く請求書や督促状、通帳の引き落とし履歴などから確認することができます。
見逃しやすい項目のため、忘れずにチェックしておくと安心です。
連帯保証人としての債務にも要注意
被相続人が亡くなったとき、その人が誰かの「連帯保証人」になっていた場合の債務も、相続の対象になります。
これは、たとえ被相続人自身が直接お金を借りていなくても、保証していた相手が借金を返せなくなった場合に、相続人が代わりに返済を求められる可能性があるということです。
連帯保証とは、契約上、主たる債務者(借主)と同じ責任を負う立場であり、非常に重い責任を伴います。
そのため、被相続人が連帯保証人だった場合には、債務者本人が返済を続けているかどうかに関係なく、相続人に返済義務が生じることがあると考えられています。
しかし、連帯保証契約は通常、目立つ形では記録が残されていないことが多く、発見が遅れることもあります。
そのため、以下のような点に注意して確認を行うとよいでしょう。
- 被相続人が保証人になったことを示す契約書や覚書
- 金融機関や知人とのやり取りの記録
- 相手からの突然の請求書や連絡
連帯保証に関する債務は、内容を把握していないと、突然高額な請求を受けるリスクもあるため、特に注意が必要です。
心当たりがある場合や確認が難しい場合は、弁護士に相談するのも有効な方法です。
借金がある場合の3つの対応方法【選択肢の比較】
相続財産の中に借金が含まれていた場合、相続人はそのまま相続するか、何らかの形で放棄するかを選ぶことになります。
ここで重要なのは、相続には3つの選択肢があり、それぞれメリット・デメリットがあるという点です。
相続の3つの対応方法とは、以下の通りです。
- 単純承認(たんじゅんしょうにん):財産も借金もすべて引き継ぐ
- 相続放棄(そうぞくほうき):すべての相続をしないと宣言する
- 限定承認(げんていしょうにん):プラスの財産の範囲で借金を返す
どの方法を選ぶかは、相続財産の全体像をしっかり把握した上で判断することが大切です。
一度選んだ後に取り消すことは原則できないため、慎重な判断が求められます。
次の見出しから、それぞれの選択肢について詳しく見ていきましょう。
1.単純承認:財産も借金もそのまま相続
単純承認とは、被相続人が残した財産も借金も、すべてそのまま相続するという方法です。
単純承認を選ぶと、現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。
つまり、借金の額が多い場合には、相続人が自分の財産から返済しなければならないリスクがあるということです。
ただし、すでに借金が返済されていたり、プラスの財産の方が多いと明確にわかっている場合は、単純承認を選ぶことで手続きも簡単に済みます。
注意点として、次のような行動をとると「単純承認した」と判断されることがあります。
- 相続財産を勝手に使った
- 遺品や不動産を処分した
- 借金の一部を返済した
こうした行為は、意図していなくても法的に「相続を受け入れた」とみなされる可能性があるため、相続の方針を決めるまでは慎重に行動することが大切です。
2.相続放棄:一切の相続を拒否する制度
相続放棄とは、被相続人が残したすべての財産や借金を一切引き継がないとする制度です。
プラスの財産もマイナスの財産も含めて「相続しない」と手続きをすることで、借金の返済義務からも免れることができます。
相続放棄をするためには、家庭裁判所に申し立てを行う必要があり、原則として「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」に手続きを済ませなければなりません。
この制度の大きな特徴は、以下のような点です。
- 借金の額が大きく、相続すると損をする場合に有効
- 手続きが完了すれば、その後請求されることはない
- 放棄した人は「初めから相続人でなかった」ものと扱われる
ただし、相続放棄をすると、プラスの財産も一切受け取ることができなくなるため、慎重に判断する必要があります。
また、相続放棄をしたからといって家族全体で放棄したことになるわけではありません。
他の相続人に影響が出ることもあるため、家族間での話し合いや連携も重要です。
借金が明らかにある場合や、財産の内容が不透明で心配な場合は、早めに相続放棄を検討することも一つの選択肢です。
3.限定承認:プラスの財産の範囲内で借金を返済する制度
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ、借金などのマイナスの財産を返済するという制度です。
つまり、相続によって得た財産以上の借金を背負うことはないという特徴があります。
たとえば、被相続人が300万円の現金を残していて、借金が500万円あった場合、相続人は300万円までの返済義務を負いますが、それ以上の200万円を自分の資産から支払う必要はありません。
限定承認は、以下のような状況で検討されることがあります。
- 財産と借金のどちらが多いかわからない
- プラスの財産を失いたくないが、借金の全額を背負うのは避けたい
- 遺品の一部に価値があり、手放したくない
ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があり、手続きが複雑で時間もかかることがあります。
家庭裁判所への申立てに加え、債権者への公告(一定期間、債権者に名乗り出るよう告知)などの手続きも必要です。
そのため、利用する際は弁護士などの専門家に相談することで、手続きがスムーズになる可能性があります。
限定承認はあまり一般的ではありませんが、財産を守りつつ、過度な借金を避けたいときに有効な手段の一つです。
相続放棄・限定承認には期限があるので注意
相続放棄や限定承認を考えている場合、「3ヶ月以内に手続きする必要がある」という期限に特に注意が必要です。
この期間は、「相続が発生したことを知った日」から数えて3ヶ月とされています。
たとえば、親が亡くなった日を知ったのが8月1日なら、11月1日までに家庭裁判所へ申し立てをしなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、自動的に「単純承認した」とみなされることがあるため、知らずに借金を背負うリスクも生じます。
期限内にきちんと対応するためには、以下の点が大切です。
- 相続人同士で早めに連絡を取り合う(特に、限定承認の場合)
- 被相続人の財産や借金の有無をできるだけ速やかに調べる
- 必要に応じて専門家に相談する
また、どうしても財産の全容がわからない場合には、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることもできます。
これは、相続放棄や限定承認をするかどうか決めるまでの期間を延ばしてもらう制度です。
相続は気持ちの整理がつかない中で進めなければならないことが多いため、期限のある手続きは、なるべく早めに行動を始めることが大切です。
家庭裁判所での手続きが必要
相続放棄や限定承認を選ぶ場合、家庭裁判所での正式な手続きが必要です。
これは、「一方的に放棄や限定的に相続すると宣言するだけでは効力が認められない」ためです。
たとえば、相続放棄をしたい場合には、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があります。
この書類には、相続人の情報や相続関係、放棄の理由などを記載し、必要な添付書類(戸籍や住民票など)も揃える必要があります。
限定承認の場合も同様に、申述書や財産目録を提出し、相続人全員の合意を得た上で申し立てを行います。
さらに、限定承認の場合には、債権者への公告(新聞などでの通知)や財産の清算手続きも必要となり、手続きが複雑になります。
家庭裁判所での手続きには時間がかかることもあるため、必要書類の準備や申立てのスケジュール管理が重要です。
また、書類に不備があると受理されない場合もあるため、迷ったときは早めに専門家に相談するとよいでしょう。
家庭裁判所での手続きを経ることで、法律的に相続放棄・限定承認の効力が認められ、将来のトラブルを防ぐことができます。
3ヶ月以内に判断しないと単純承認とみなされることも
相続が発生した際、相続人が「何の手続きもせずに3ヶ月を過ぎてしまうと、自動的にすべての財産を相続した(=単純承認)」とみなされることがあります。
この期間は、相続が発生したこと、そして自分が相続人であることを知った日から起算されます。
たとえば、被相続人が多額の借金を抱えていたとしても、3ヶ月以内に相続放棄や限定承認の手続きをしなければ、その借金も含めて相続したと法律上扱われてしまうおそれがあります。
さらに、次のような行動も「単純承認した」とみなされる可能性があります(法定単純承認)。
- 相続財産を処分(売却・譲渡)した
- 借金の一部を返済した
- 相続財産を自分のために使用した
このように、意図しない行動によって相続の選択が固定されてしまうことがあるため、慎重な対応が必要です。
単純承認にあたるか判断に迷う場合には、弁護士にご相談ください。
もし財産の内容が不明で、判断が難しい場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の延長申立て」をすることで、3ヶ月の期限を延ばしてもらえることもあります。
この制度を活用することで、より冷静に状況を整理し、適切な判断ができるようになります。
とにかく、3ヶ月という期限は厳守すべき重要なポイントです。
うっかり放置して後悔することがないよう、早めの行動を心がけましょう。
相続放棄した場合、他の相続人に影響する?
相続放棄をすると、その人は「最初から相続人でなかった」と法律上みなされるため、そのぶんの相続分が他の相続人に移ることになります。
つまり、相続放棄は他の相続人に影響を与える可能性があります。
たとえば、子どもが3人いて、そのうち1人が相続放棄をした場合、残る2人が相続財産を分けることになります。
借金があるケースでは、放棄しなかった相続人がその借金の支払い義務を引き継ぐことになります。
また、全員が相続放棄をした場合には、次の順位の相続人(たとえば兄弟姉妹など)に相続権が移ることになります。
そのため、自分だけが放棄しても、他の親族に借金の返済義務が生じる可能性があるのです。
このような背景から、相続放棄を検討する際は、他の相続人とも情報を共有し、対応方針をすり合わせておくことが大切です。
借金があることを他の相続人が知らずに相続してしまうと、後からトラブルに発展することもあります。
相続放棄は個人の判断でできますが、周囲の家族にも影響を与える重要な決断であることを理解しておくとよいでしょう。
弁護士に相談するメリットと費用の目安
相続に関する手続きや判断は、内容が複雑で法律的な知識も必要になることが多いため、弁護士に相談するメリットは大きいといえます。
とくに借金がからむ相続では、専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えることができます。
ここでは、弁護士に相談することで得られる主なメリットと、費用の目安についてご紹介します。
借金の有無の調査サポート
弁護士に相談する大きなメリットのひとつが、被相続人に借金があるかどうかの調査を代行・サポートしてくれることです。
相続人が個人で調べるには限界がある情報も、弁護士であれば、より正確かつ効率的に確認できるケースがあります。
たとえば、以下のような調査を依頼することが可能です。
- 信用情報機関(CIC、JICCなど)への情報開示手続きの代行
- 金融機関や消費者金融への照会
- 契約書や請求書の内容確認と法的な解釈
- 取引履歴が不明な債権者との連絡・交渉
特に、借金の契約書や明細が見つからず、どこに借金があるのか分からない場合には、専門的な知識が必要になります。
弁護士であれば、相手先とのやり取りを代理で行い、適切な情報を引き出してくれるため、相続人の精神的・時間的な負担も軽減されます。
また、調査結果をもとに、「相続放棄」「限定承認」などの次の対応についても的確なアドバイスを受けられるため、後悔のない判断につながります。
相続放棄の手続き代行
弁護士に依頼すると、相続放棄の手続きをすべて代行してもらうことができます。
相続放棄は家庭裁判所への申し立てが必要で、書類の準備や記載内容には正確さが求められます。
慣れていない人にとっては、意外と手間と時間がかかる作業です。
弁護士に手続きを任せることで、次のようなサポートが受けられます。
- 相続放棄申述書の作成
- 必要な戸籍や住民票などの収集
- 裁判所とのやり取り(補正対応や問い合わせ)
- 放棄が受理されるまでのフォロー
特に、「期限が迫っている」「書類をそろえる時間がない」「申立てに不備があるか不安」といった場合には、プロに任せることでスムーズかつ確実に手続きを進めることができます。
また、家族で複数人が相続放棄を希望する場合も、まとめて対応してもらえることが多く、時間と手間を省くことができる点もメリットです。
費用は事務所によって異なりますが、相続放棄の手続き代行は1名あたり3〜7万円程度が一般的な相場とされています。
内容や地域によって異なるため、事前に見積もりをもらって確認すると安心です。
家庭内トラブルの予防にもつながる
相続では、お金や手続きに関する考え方の違いから、家族や親族の間でトラブルになることが少なくありません。
特に借金が関係する相続では、「誰が相続するか」「放棄すべきか」など、判断に迷う場面も多く、感情的な対立に発展するケースもあります。
弁護士に相談・依頼することで、次のような形で家庭内トラブルを予防する効果が期待できます。
- 法律に基づいた客観的な説明により、感情的な対立を避けられる
- 各相続人への説明や連絡を弁護士が代行してくれる
- 相続放棄や限定承認の方針を専門的な立場で整理できる
- 曖昧な記憶や言い分による誤解を防げる
また、「本当に借金があるのか」「相続放棄すべきかどうか」など、家族間で意見が分かれる場面でも、第三者の専門家が入ることで冷静に話し合いができる環境が整います。
結果的に、法的な対応を適切に進められるだけでなく、家族関係の悪化や長期的な争いを未然に防ぐことにもつながるのです。
相続の場面では、法律だけでなく人間関係にも配慮が必要となるため、弁護士の存在は非常に心強いものになります。
【まとめ】遺産に借金があるかも…と思ったらすぐに行動を
相続というと「財産を受け継ぐ」という前向きなイメージを持ちがちですが、実際には借金や未払い金などの「マイナスの財産」も相続の対象になるため、油断は禁物です。
もし「借金があるかもしれない」と感じたら、まずは落ち着いて情報を集め、状況を正確に把握することが大切です。
書類や通帳、郵便物、信用情報の開示など、できるところから確認を始めましょう。
そして、借金が見つかった場合は、相続には3つの選択肢(単純承認・相続放棄・限定承認)があることを知り、それぞれの特徴とリスクを理解したうえで判断することが必要です。
特に、相続放棄や限定承認には「3ヶ月以内」という期限があるため、早めの対応が求められます。
調査が難しい場合や判断に迷うときは、弁護士に相談することで調査や手続きをスムーズに進められ、家庭内のトラブルも防ぎやすくなります。
遺産に借金があるかもしれない――そう思ったそのときが、行動のタイミングです。
後悔のない選択をするために、情報を集め、必要な手続きを進めていきましょう。