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祖父名義の家は孫が相続できる?父が亡くなった後の手続きと注意点

2025.7.18

祖父名義の家が残されたまま、お父様がすでに亡くなっている場合、家の相続がどうなるのか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

 

まずは、祖父とお父様の死亡時期や戸籍を確認し、相続人が誰になるのかを確かめることが第一歩です。

 

そのうえで、孫が家を相続できるかどうかを判断していきます。

 

孫が家を相続できる可能性はありますが、必ずしも誰でもできるわけではありません。


相続には法律上の決まりがあり、特に「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」や「数次相続(すうじそうぞく)」といった仕組みが関わってきます。


ここでは、その基本的な考え方と進め方をご説明します。

祖父名義の家を相続する基本ルール

一般的に、亡くなった方(被相続人)の財産は、その配偶者子どもが相続します。


つまり、祖父が亡くなった場合には、相続人は祖母と祖父の子どもたち(お父様や叔父・叔母)となります。


このため、孫である方には、原則として相続権はありません。

 

ただし、お父様がすでに亡くなっている場合など、特別な事情があるときには、孫が相続人となるケースもあります。


その代表的な仕組みが、次にご説明する代襲相続です。

父が亡くなった場合の相続は「代襲相続」がポイント

代襲相続とは、本来相続するはずだったお父様が、祖父よりも先に亡くなっていた場合に、お父様の子どもが代わりに相続人となる仕組みです。


この場合、孫はお父様が持つはずだった相続分を受け継ぎます。

 

たとえば、祖父が亡くなられた時点でお父様がすでに亡くなっていれば、孫がお父様の代わりとして相続人になります。


一方、お父様が生きている場合には、孫が相続人になることはありませんので、死亡の時期が重要です。

 

なお、お父様が祖父の養子である場合は、お父様と祖父との養子縁組の後にその孫に当たる方が出生している必要があります。

祖父が亡くなった後に父も亡くなった場合の「数次相続」とは

祖父が亡くなった後、まだ相続手続きを終えていないうちにお父様も亡くなった場合には、数次相続と呼ばれる状態になります。


数次相続とは、相続が複数回重なるケースのことです。

 

この場合、祖父の家の権利は一度お父様に相続され、そのお父様の持ち分がさらに孫に相続されるという流れになります。


結果として孫が家を受け継ぐことになりますが、手続きが二重に必要となるため、代襲相続に比べて手続きが複雑になることが多いです。


早めに専門家に相談しながら進めることも検討するとよいでしょう。

孫が相続人になるケースとならないケース

孫が相続人となるかどうかは、お父様の生死や手続きの状況によって異なります。

 

孫が相続人となる主なケース

  • 祖父の死亡時にお父様がすでに亡くなっていた場合(代襲相続

  • 祖父の死亡後、手続きが終わらないうちにお父様が亡くなり、孫に権利が移った場合(数次相続

 ※この他に祖父の遺言により孫が家を取得することも考えられます。

 

孫が相続人とならない主なケース

  • お父様が生きている場合(孫には相続権がない)

  • お父様が相続放棄していた場合

  • 祖父の相続が完了した後にお父様が亡くなった場合

このように、孫が相続人となるにはいくつかの条件があります。


まずは、祖父とお父様の死亡の時期や、相続手続きの進み具合を確認することが大切です。

祖父名義の家を孫が相続するための手続き

祖父名義の家を孫が相続するには、いくつかの段階を踏んで進める必要があります。

 

手続きには法律で決められた書類の収集や協議が求められますので、順番に確認していきましょう。

まずは相続人を調べるために戸籍を収集

最初に行うべきことは、誰が相続人なのかを調べることです。


祖父が亡くなった時点での法定相続人を確認し、その後に父が亡くなっている場合は、その相続関係も調査します。

 

このためには、祖父の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集めます。


さらに、父の出生から死亡までの戸籍も必要となります。


これらの戸籍によって、正確な相続人を確定します。

 

戸籍の収集は役所で請求しますが、取得する範囲が広く時間がかかることもあります。


専門家に依頼して代行してもらうことも検討されるとよいでしょう。

家の名義変更(相続登記)の手順と必要書類

相続人が確定したら、次に必要なのが家の名義変更(相続登記)です。


登記をしない限り、法律上の所有者が変わらないため、売却や担保に入れるといった行為ができません。

 

手順としては、まず相続人全員で遺産分割協議を行い、家を誰が相続するか決めます。


その結果を書面にまとめた遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印します。

 

名義変更の際に必要な書類は、主に次のようなものです。

  • 被相続人(祖父)の出生から死亡までの戸籍謄本

  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票

  • 相続人全員の戸籍謄本

  • 相続人全員の印鑑証明書

  • 遺産分割協議書

  • 不動産の固定資産税評価証明書

これらを揃えて法務局に申請します。


準備する書類や書き方に不安がある場合は、司法書士などに確認すると安心です。

相続税の申告や控除についても確認しよう

家の名義変更とあわせて、相続税の申告が必要かどうかも確認します。


相続税には基礎控除があり、遺産総額が基礎控除額を超えなければ申告は不要です。

 

基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人の数×600万円)で計算します。


家の評価額や他の財産も含めて計算し、超える場合は相続税の申告と納税を行います。

 

また、場合によっては配偶者控除や小規模宅地等の特例が適用できることがありますので、税理士など専門家に相談して確認されるとよいでしょう。

家を放置したままにするリスクに注意

相続した家の名義変更をせずに放置しておくと、いくつかのリスクがあります。


まず、法務局への相続登記が2024年4月から義務化され、期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

また、長く放置しているうちに相続人が増え、話し合いが難航することもあります。


売却や賃貸、担保にすることもできず、資産として活用できないまま維持管理の負担だけが残る場合もあります。

 

さらには、倒壊などが起きた場合には、相続人に損害賠償責任が生じる場合もあります。

 

このような事態を防ぐためにも、早めに相続人で協議し、名義変更まで手続きを進めることが望ましいでしょう。

祖父名義の家を相続するときの注意点

祖父名義の家を相続するときは、単に名義を変えるだけでは済まないことも多いです。

 

手続きの途中で相続人同士の意見が合わなかったり、法律上の選択肢に迷うこともあります。

 

ここでは、特に気をつけておきたいポイントをご説明します。

他の相続人との話し合いが大切

不動産は現金と違い、分けることが難しい財産です。

 

そのため、他の相続人としっかり話し合いをすることが重要です。

 

相続人が複数いる場合、誰が家を引き継ぐか、代わりに金銭を支払うのかなど、具体的に決める必要があります。


話し合いがまとまらないまま手続きを進めると、後になって紛争になるおそれもあります。

 

特に、長年放置されている家の場合は相続人の数が増えていることもあります。


戸籍の確認をしながら、関係者全員と協議するようにしましょう。

相続放棄や共有名義の選択肢も検討

家を引き継ぐことに抵抗がある場合は、相続放棄共有名義にするといった選択肢もあります。

 

相続放棄は、相続が始まったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所で申請する必要があります。

 

家が遠方にあり管理が難しい場合や、固定資産税の負担が重い場合などは検討してもよいでしょう。

 

また、相続人全員の共有名義にして、後で相談しながら処分するという方法もあります。


ただし共有名義は、将来の売却や管理の際に意見が合わずトラブルになることもあるため、慎重に判断することが大切です。

専門家への相談でトラブルを防ぐ

相続手続きは複雑で、法律や税金の知識も必要です。


特に、不動産の相続は遺産分割や登記の手続きを間違えると後々困ることもあります。

 

そのため、早い段階で弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談するのも有効です。


専門家に相談することで、手続きを円滑に進めやすくなり、相続人同士の話し合いもスムーズになります。

 

少しでも不安がある場合は、専門家の力を借りながら進めると安心です。

まとめ

祖父名義の家は、お父様が亡くなっている場合でも、孫が相続できる可能性があります。


ただし、孫が相続人となるにはいくつかの条件があり、代襲相続数次相続といった仕組みの理解が重要です。


まずは、祖父とお父様の死亡の時期や相続手続きの進み具合を確認し、正しい相続人を確定することから始めるとよいでしょう。

 

また、相続登記は2024年4月から義務化され、期限を過ぎると過料が科される可能性もあります。


名義変更や相続税の申告など、必要な手続きを早めに進めることが大切です。


家を放置していると、相続人が増えて話し合いが難航したり、資産として活用できないまま管理の負担が続いたりするリスクもあります。

 

相続手続きは複雑で、法律や税金の知識が必要な場面も多くあります。


不安や疑問がある場合は、司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談するのも有効です。


早めに準備を進め、家の今後について相続人同士でしっかり話し合うことが、トラブルを防ぐ第一歩といえるでしょう。

 

まずは、お近くの役所で戸籍謄本を取り寄せ、相続人を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問

祖父名義の家の相続については、「遠方の家で管理が難しい」「兄弟と話がまとまらない」「自分が相続人かどうかわからない」といった悩みを抱える方が少なくありません。  

 

ここでは、特に多く寄せられる質問とその考え方をご紹介します。

祖父が亡くなり、父もすでに亡くなっています。孫である私は相続できますか?

お父様が祖父よりも先に亡くなっている場合、孫が代襲相続の仕組みにより相続人となることが法律で認められています。


この場合は、お父様が本来取得するはずだった相続分を、孫が引き継ぐ形になります。

 

ただし、お父様が祖父の死後に亡くなった場合や、相続放棄していた場合などは、代襲相続が認められないことがあります。


具体的な状況に応じて判断されるため、まずは死亡の時期や手続きの状況を確認し、必要であれば専門家に相談されるとよいでしょう。

祖父名義の家を放置するとどうなりますか?

相続手続きをせずに家を放置すると、いくつかのリスクがあります。


まず、2024年4月から相続登記が義務化され、期限を過ぎると最大で10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

また、長期間放置しているうちに相続人が増え、話し合いが難しくなることもあります。


家の管理や修繕の負担は続きますが、売却や賃貸などの活用はできず、資産価値が下がってしまう恐れもあります。


こうしたトラブルを避けるためにも、できるだけ早く手続きを進めることが大切です。

自分で手続きするのと専門家に依頼するのではどちらがいいですか?

相続登記や遺産分割協議、相続税の申告などは、ご自身で進めることも可能です。


費用を抑えられるというメリットがありますが、必要書類の準備や書き方、手続きの流れがわかりにくい場合もあります。

 

一方、弁護士や司法書士、税理士といった専門家に依頼すると、手続きを円滑に進めやすくなり、相続人同士の話し合いの調整や税務面のアドバイスも受けられます。


時間や手間をかけずに確実に手続きを終えたい方や、不安がある方は専門家に相談されることをおすすめします。

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